今回は「Q&A」ということでシェアしていきたいと思います。
よい質問をいただいた未来思考さん、ありがとうございました!
では早速、質問内容はこちら^^
題名: 薬理の疑問点
メッセージ本文:
はじめまして。
こちらのサイトは仕事のうえで参考にさせて頂いています。
薬学を学んでいないわたくしにもたいへんわかりやすく、
薬剤で疑問に思ったことがあります。
①PPIについて
プロトンポンプ阻害作用は胃酸分泌を強力に抑えるとあります。
②錠剤の主成分と添加物について
薬剤のほとんどが添加物ということですが(例:コントミン12.
デパス1㎎
また添加物で錠剤を大きくしているのなら、
ご返答頂けたら幸いです。
では僕の回答です!
胃薬をずっと飲んでいて問題ないの?
まずは①の疑問です。
簡単にいうと、胃酸を長期的に抑制して何か問題は起きないのか?という疑問ですね。
こういう疑問って、本当に率直というか直感的な疑問だと思うんです。
確かに、PPIやH2ブロッカーの登場によって胃潰瘍や胃炎の治療は簡便かつ飛躍的に改善したことは事実だと思います。
今となっては1日1回飲むだけで数日の効果が持続するなんてザラですからね。本当にすごいことだと思います。
だが、ですよ。
それ自体は素晴らしいことだと思いますが、その使い方ですよね。
ひどく再燃を繰り返すような悪性の潰瘍は別として、胸焼けがしたとか、すこし胃が荒れたという程度で、何か月・何年も漫然とPPIやH2ブロッカーを飲みつづけているということは果たしてよいことだろうか?
その答えって、別にむずかしいことでもなんでもなくて、当たり前によくないことだと思うんです。
人間の体には、基本的に無駄なものってないはずです。(無駄な機能は、進化の過程で淘汰されていますから)
質問内容でご指摘のように、胃酸には食物の消化や感染の防止にすごく大切な役割を果たしているわけですよね。
それを、強力な作用をもつPPIで抑え続けていいわけがないです。
東洋医学的にいえば人間の生命の基盤ともいえる「消化の火(アグニ)」を消してしまうわけですから。
あくまで大切なのは、なぜ胃が荒れてしまったかという原因にあるのであって、それをまったく考慮せずに単に胃酸を抑える薬を飲みつづけているっておかしいよ!と素直に思えるかどうかだと思うのです。
もちろんその原因を簡単に解決できない場合もあるかもしれませんが、少なくともそこを自分で理解してアプローチしていくことは必要だと思います。
そして、「薬を飲んでいる状態は普通ではない」という当たり前の意識をもつことはとっても大事なことだと思います。
残念ながら、そういう観点をもった医療人はまだまだ少数派です・・・。
だから、こういった質問をしていただける方には、ぜひその素朴な感覚を大切してほしいと思っています。そして、ぜひその解決法をそれぞれのフィールドで考えていってほしいです。
と、ここまでは完全な僕個人の意見ですが、もっとウラの話をするとですね。
PPIやH2ブロッカーを長期服用した際に、何か問題が生じていたとしてもそれが大っぴらにでることはまずないと思います。
メーカー側も売上が減るような情報をわざわざ自らすすんで公開することはありません。(もちろん多数の死亡事故につながるようなものであれば、隠すことは難しいと思いますが・・・)
実際に製薬メーカーにきいても、長期服用していて問題なかったというデータしかほとんど教えてくれませんから(苦笑)
でも、実際には副作用はでているはずで、以前に紹介した「PPI(ランソプラゾール)で起こる下痢?」のような報告もあります。
ですので、こういったデータは個別に集めて評価していくしかないと思います。
その上で、それぞれがどのように判断するか、ということになるのではないでしょうか?
僕自身の意見としては、胃酸を長期的にむやみに抑えることは身体の体にとって不自然なことである以上、好ましくないことだと思います!
なぜ大きな錠剤ってあるの?
では、②の質問に移ります。
なぜ大きい錠剤は飲みにくいのに発売されているか?という疑問ですね。
まず単純に主成分の量が多くなってしまうもの(力価が低いもの)については、当然錠剤の重さ(大きさ)が大きくなってしまいます。
質問であったスローケー、マグラックス、
そういった製剤的な工夫のために錠剤が大きくなっているケースもあると思います。
最近では「徐放錠」といって、体内(腸管内)でゆっくりと主成分を放出することで効果が長く続くようにした錠剤もぞくぞくと開発されています。
たとえば、以前に書いた「パキシルCR錠」のようなシステムだったりですね。
こういった工夫をするためには、主成分を固めただけでは不可能で、いろいろな基材や添加物を組み合わせて錠剤を形成しないといけません。そうすると、結果的に錠剤が大きくなってしまったりすることはあります。
おもしろい現象として「ゴーストタブレット」といって、錠剤の殻みたいなものが便のなかにまざって出てくることがあります。これが主成分を包んでいた錠剤のフィルムや骨格みたいなものです。
あと他の理由としては、錠剤が小さすぎると逆に扱いづらくなってしまうということもあります。
視力の弱い患者さんや手先の感覚のない方、お年寄りは小さすぎると落としてなくしてしまったりということがあります。
だから、小さくはできるんだけど、わざと添加物を加えて錠剤をある程度大きくしていたりしますね。
では、最後。半錠に関してですね。
そうですねぇ~。
製造過程での成分の偏りというのはないとはいえませんが、一度撹拌してから固めることを考えば小さな錠剤のなかで極端な濃度差がでることはあまりないと思います。
ただ、実際のところ正確かといわれると微妙なところですね。
手作業で半分に正確に割れているかといわれたら・・・。
もし処方された用量に対する規格が発売されているのであれば、それを使ったほうが清潔ですし正確だと思いますね。(0.5mgの処方であれば1mgの半錠ではなくて、0.5mg錠を使うとか)
(ただ取り間違えのリスクマネジメントの観点から、採用する規格を少なくして、敢えて半錠で調剤することはあります。色んな側面があるんです。。。)
という、感じです^^
何か参考になれば嬉しいです!
またシェアしたい内容がありましたら記事にしたいと思います。
では、また!
コメント
記事にして頂きありがとうございます!
胃酸のpHの上昇で消化不良や易感染のリスクがあがるのは心配していた通りでした。
「潰瘍治療は終わりましたが予防のためにもしばらく胃薬を飲みましょう」の『しばらく』が老人ホーム等に入所してしまうと『永遠』となってしまう可能性があるのです。
再発したら止めた医師の責任となりかねないので下手にやめることができないのでしょうか。
ではPPIやH2ブロッカーを中止したいときにはどうするか、ですね。
代替薬として胃粘膜保護剤がありますが、レバミピド(ムコスタ)などの胃粘膜保護作用では力不足ではないか、との話を聞いたことがあります。
あとは刺激的な食事を避ける、消化の良いものを摂る、といったことを注意するしかないのでしょうか。
今回の記事は、いわゆるエビデンスのあるものではなく「常識的」な話になってしまいました^^
胃酸の長期的な抑制によって、実際どのような影響があるかについてはなかなか一般的に証明されたものは少ないと思います。(もしご興味があれば論文など探してみてもよいかもしれません)
「予防」という言葉は魔法みたいなもので、医師がその言葉を使うとどうしても納得してしまうと思うのです。
だからといって予防的な薬物治療をすべて否定できるかといえば、心筋梗塞や不整脈に対する抗血栓療法などもありますし、難しいところではあります。
しかし、大切なのは「薬を一時的な対処として使い、止めることを前提に治療する」という意識だと思うのです。
そうでなければ、再発防止や予防といった魔法のことばで、死ぬまで薬を飲みつづけなければいけなくなりますからね。それは、少なくとも僕は正しい姿勢だとは思いません。
じゃあ、薬を使わずにどうやって治療するの?という話になると思いますが、それは「環境」「食事」「運動」しかないわけです。すごくシンプルだと思います。
特に慢性的な症状などは、必ず生活のなかで原因があるはずです。それは肉体的なものかもしれないし、心理的なことかもしれません。症状という結果は同じでも、人によって原因はまったく異なることもあるはずです。
そういったなかで、本当の医療をやろうとおもったら、結局のところそれらを一緒になって考え、患者本人も本気になって取り組んでいかなくてはいけないと思います。
薬剤師がいうのはおかしいかもしれませんが、薬から一旦離れてみる、という発想の転換がそろそろ今の日本の医療には必要なんじゃないかと思います。
今後はそういった医療になっていけばいいなって本気で思っています^^
錠剤がなぜ大きいか、場合によっては必要以上に大きく感じるかと思いますが、
賦形剤がないと錠剤に成形することができないからです。
そもそも有効成分だけでは押し固めることが出来ないので、賦形剤(かさ増しです)を入れて圧縮形成性を良くしています。
また、押し固めた錠剤が適切な硬度になるように結合剤添加したり、体内で適切に崩壊するよう崩壊剤を添加したりします。
また有効成分の粉体特性によっては、打錠障害と呼ばれる圧縮成形する際に問題が起こり得ます。
打錠障害は賦形剤をより多く入れれば起こりにくくなります。滑沢剤の添加である程度防げますが、滑沢剤は添加し過ぎると錠剤の硬度低下を招くため、増量するにも限度があります。
(外部滑沢を行う方法もありますが最終手段です)
他にも圧縮形成性を高めるために造粒と呼ばれる粉の粒を大きくする工程を経たりします。
一般に造粒をすると賦形剤を減らすことも出来ますが、工数が増えてコスト増にもなります。外資系メーカーには造粒をしない(=直打)製剤も多いようです。(賦形剤等の組成から推測可能であったりします)
つまり大きい錠剤は製剤的に工夫をしなかった、或いは出来なかった結果かと思います。
なかにはトラムセットのように極限まで賦形剤を減らして要るものもありますが…。
少しでもコンパクトに見せるためにカプレット形状にしたりはしていても、そもそも有効成分の圧縮形成性が悪いために賦形剤が増えて大きくなる、
かといって半量にして2錠飲めというのも如何なものか、仕方なく大きい錠剤になりました。
そういった製剤が多い気がします。
帯状疱疹の時に飲むゾビラックスのようにたくさん飲まなければならない製剤は、
ジェネリックメーカーが製剤的工夫をしていたりします。(ゾビラックスのゾロではスティック顆粒があったかと思います)
大きい錠剤、私も飲むのは大嫌いです。
大概、割って飲んでいます。
詳しいご説明ありがとうございます。
当然のことかもしれませんが、それぞれの製剤は各社が躍起になって考えた結果発売されているものですよね。
その形や大きさ、添加物など意味があるんですよね。(もちろん品質だけではなく、いろいろな各社事情も含んでいると思いますが^^;)
大きい錠剤に関しては、個人的にも患者さん的にも服用負担が大きいので、できれば適度な大きさにしてほしいというのが希望ですね。
ジェネリックは特に製剤で勝負できると思いますので、各社頑張ってほしいなと思います!
PPIが認知症の発症リスクになるという論文が出ました。
これを見ますと、PPIの慢然投与は避けるべきであると認識せざるを得ません。
http://archneur.jamanetwork.com/article.aspx?articleid=2487379