ウイルスや細菌による感染症を予防する「ワクチン」。
ワクチンには大きく分けて、「不活化ワクチン」と「生ワクチン」の2種類があります。
今回はこれらの違いについて学んでいきましょう!
目次
潜伏期間って何?
ワクチンを理解する前に、まずはウイルスの「潜伏期間」についておさらいしていきましょう。
ウイルスが体内に入ると、ある細胞に感染します。もし、感染後すぐに細胞内で派手に暴れてしまうと、抗原提示をいって体内のパトロール隊(免疫細胞)に見つかってしまいます。
すると、Tc細胞やマクロファージといった免疫細胞にやっつけられてしまいます。
そこで一部のウイルスは感染後、細胞のなかであまり増殖せず、ひっそりと状況をうかがっている状態でいることがあります。この隠れている期間のことを「潜伏期間」といいます。
そしてある時突然、ワッと増殖して悪さをするのです。具体的には、B型、C型肝炎ウイルスやエイズのHIVなどが有名です。
これらはすべて長期の潜伏のあとに、いつ発症するか分からないというたちの悪いウイルスです。
潜伏期間を利用した生ワクチン!
ウイルスの潜伏を逆に治療に利用したのが「生ワクチン」です。「生ワクチン」とは毒性を弱めた病原微生物(細菌、ウイルス)をあえて投与することで、その病原微生物に対する免疫力を高める予防治療です。
その名のとおり生きている病原微生物なので、増殖する能力を残しています。つまり、細胞内に侵入、潜伏してから長期にわたりときどき増殖することになります。
その増殖のたびに感染細胞は抗原提示を行い、Tc細胞やマクロファージを活性化するので、結果として長期的な免疫を維持することができるのです。
このことから、生ワクチンは一度の投与で長期的に免疫を保持できるようになるのです。
生ワクチンの例は?
ポリオ、ロタウイルス感染症、結核(BCGワクチン)、麻しん(はしか)、風しん、おたふくかぜ、水痘(みずぼうそう)、黄熱病 など
不活化ワクチンとは?
では、一方「不活化ワクチン」は何かというと、これは病原微生物の抗原性だけを残して殺してしまったものです。
抗原性とは、体内で抗原の産生を引きおこす性質のことです。つまり、増殖はしないけど、抗体を体内でつくらせることはできる、ということです。
「不活化ワクチン」では、生ワクチンのような長期の潜伏や増殖は得られないので、免疫は短期間で失われてしまいます。そのため、不活化ワクチンは、一定期間の後に繰り返し接種する必要があります。
インフルエンザのワクチンを毎年受けないといけないのはこのためなのです。
不活化ワクチンの例は?
インフルエンザ・A型・B型肝炎・ジフテリア・肺炎球菌感染症・破傷風・日本脳炎・狂犬病 など
◆まとめ◆
「生ワクチン」は毒性を弱めた生きた病原微生物。体内で潜伏・増殖するため長期的な免疫を得られる。
「不活化ワクチン」は死んだ病原微生物。体内では増殖できず短期間の効果しか得られないため、繰り返し接種する必要がある。