細胞の死に方は大きく分けて「2種類」あります。
ネクローシス(壊死)とアポトーシスです。
今回は、これらの二つの細胞死の過程を学んでいきましょう!
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ネクローシスとは?
ネクローシス(necrosis)とは、日本語で「壊死(えし)」ともよばれます。
細胞膜に穴を空けられたり、細胞の生存に必要な酸素を止められたりすることで起こる受動的な傷害による細胞死のことです。
たとえば、体液性免疫の助っ人である「補体」による、免疫溶菌(細菌の膜に穴をあけて、細菌細胞を壊す)は壊死のひとつです。
また、心筋梗塞は、心臓の冠血管が詰まり血流が途絶えることで、その先の組織に酸素を供給できなくなり、心筋細胞が壊死を起こす病気です。
アポトーシスとは?
アポトーシス(apoptosis)とは、いわゆる細胞の「自殺」のことです。
もともとすべての細胞は、ある条件をみたすと自殺するようにプログラムされています。なので、アポトーシスのことを「プログラム細胞死」とよぶこともあります。
アポトーシスの場合は、外部から力が働いて膜を破壊されるというわけではなく、細胞の中から崩壊します。
具体的には、細胞内の核にあるDNAが自然にバラバラになってしまうのです(DNAの断片化ともいう)。
Tc細胞による破壊は「ネクローシス」か「アポトーシス」か?
Tc細胞(細胞障害性T細胞)は、ウイルスに感染した細胞などをまるごと破壊する免疫細胞(リンパ球)です。
では、このTc細胞による破壊は、ネクローシスとアポトーシス、どちらのメカニズムで行われているのでしょうか?
答えは、「両方」です。
ウイルスに感染した細胞は、「自分はウイルスに感染しました!破壊してください!」という情報を伝えるために、Tc細胞に向けて抗原提示を行います。
抗原提示を受けたTc細胞は、次のような反応を起こします。
パーフォリンの放出
Tc細胞から「パーフォリン」という細胞膜に穴を空ける物質が放出されます。
これによって、感染細胞の細胞膜には穴が空けられ、ネクローシス(壊死)することになります。
Fas(受容体)の刺激
Tc細胞は抗原提示を受けると、FasL(Fasリガンド)という分子を表面に出します。
一方で、感染細胞の表面にはFas(受容体)という「自爆スイッチ」のようなものがあり、FasLが結合することでそのスイッチが「ON」になります。
すると、感染細胞内に信号が伝わって、DNAの断片化などのアポトーシスの反応が進んでいきます。
TNF-β、グランザイムの放出
Tc細胞からは、TNF-β、グランザイムといった「細胞をアポトーシスに導く物質」も放出されます。
◆まとめ◆
細胞死には「ネクローシス:壊死 , necrosis」と「アポトーシス:apoptosis」がある。
ネクローシス:細胞膜の破壊、酸素欠乏などによる受動的な細胞死。
アポトーシス:DNA断片化による細胞の自殺。別名:プログラム細胞死ともよばれる。
Tc細胞は、「パーフォリン」によるネクローシス、Fas受容体の刺激、TNF-β・グランザイムによるアポトーシスを引きおこし、ウイルス感染細胞などを破壊する。