「細菌」と「ウイルス」、どちらもさまざまな感染症を引きおこし、すごく小さな「微生物」に分類されるものです。
しかし、厳密には両者は全く異なるもので、ウイルスは生物ではありません。今回は、細菌をウイルスの違いについて学んでいきましょう。
目次
細菌は立派な生物!
甘いジュースを何日も放置しておくと、色が濁って腐ってきます。
このジュースの中で何が起こっているのかというと、ジュースの中に含まれる糖分をえさにして、細菌が増殖しているのです。
生物が増殖し、分裂するには、自分のDNAを複製・増殖させる必要があります。細菌の場合、まわりにえさ(栄養)さえあれば、自分の力で複製してどんどん増えていくことができます。
そういう意味では、増殖方法の違いはあれど、細菌も人間と同じ立派な生物なのです。細菌は、自分自身の細胞内で生きていくのに必要なエネルギーやタンパク質をつくることできます。
ウイルスは1人では増殖できない!
一方で、ウイルスは細菌とはまったく違います。ウイルスの構造をみてもらうと分かりますが、「中にDNA(RNA)が1,2本入ったカプセル」というすごくシンプルなつくりになっています。
ウイルスは、えさを食べてDNAを増殖させるような機能はもっていないため、栄養たっぷりのジュースのなかにいれても増えることはありません。
では、どうやってウイルスは増殖するのかというと、他の生物の力を借りるのです。ウイルスは他の生物の細胞内に入りこみ、その細胞がもっている増殖機構を借りて、自分のDNA(RNA)を増殖させてしまうのです。
すなわち、ウイルスは他の生物の細胞内に「寄生」しないと増えることができないのです。ですから、一般的に「細菌は他人の細胞の外で悪さをし、ウイルスは他人の細胞の中で悪さをする」のです。
免疫学では、この違いが非常に重要なポイントになります。
ウイルスの感染できる細胞は決まっている!
実は、ウイルスがすべての細胞に侵入できるわけではありません。ウイルスが侵入できるのは「自分が結合できる特定の蛋白を表面にもっている細胞」だけです。
各細胞は、ウイルスのためにそれらの蛋白をつくっているわけではないのですが、偶然不幸にもウイルスの侵入する玄関口となってしまうことがあるのです。
例として、かぜの原因となるライノウイルスは、CD54という表面蛋白に結合して細胞内に侵入します。
CD54とは?
細胞と細胞を結合させる接着分子でありICAM-1とも呼ばれ、気道上皮細胞や血管内皮細胞などの細胞表面に多く存在しています。
かぜが急性上気道炎とよばれ、かぜウイルスが気道上皮から侵入しやすいのはそのためだったのです!
鳥インフルエンザが人に感染しないのはなぜ?
ときどき「このウイルスはトリには感染するがヒトには感染しない」という話をきいたことがあるかもしれません。
それは、ヒトの細胞がそのウイルスの侵入口となる表面蛋白をもっていない場合にそういうことが起こるのです。
◆まとめ◆
細菌は、えさがあれば自分自身で複製・増殖することができ、他人の細胞の外で悪さをする。
ウイルスは生物には分類されず、他の生物の細胞内に寄生して、力を借りないと複製・増殖できない。ウイルスは他人の細胞の中で悪さをする。