抗体の働きと分類は?

s-koutai
「抗体(こうたい)」という言葉は、日常生活でも耳にしたことがあるかもしれません。

抗体は免疫機能において、最も重要な物質ともいえます。体内では、多種多様な抗原に対応できるように無数の抗体がつくられています。

今回は、抗体の形と働き、分類などについて整理していきましょう!

抗体はどこで登場する?

体内には、常に異物(細菌など)が侵入してきます。それらに対して、まずは防御の最前線ではたらくマクロファージや好中球が「非特異的」な貪食によって対抗します。

もし菌が少なければ、それらの攻撃によってやっつけることができますが、菌の数が多かったり、毒性の強いものだと突破されてしまうことがあります。

その時に必要となるのが「抗体」です。抗体により、特定の細菌に目印をつけることで、集中攻撃をしかけることができるようになります。

抗体とは?

抗体とは「特定の抗原に特異的に結合する蛋白」です。イムノグロブリン(=免疫グロブリン:immunoglobulin(Ig))とも表現されます。

簡単にいうと、抗体とはあらかじめ決められた1つの敵に結合するレーダーのような物質です。相手が1つに決まっていて、それ以外には反応しないことを「特異的」といいます。

特異的という言葉は、免疫学だけでなく多くの生物系の学問で登場するので覚えておきましょう。

ある細菌に抗体がくっつくと「外敵だ!」という信号がまわりに伝えられ、その細菌は好中球などから攻撃を受けることになります。

抗〇△抗体といえば、〇△に対してのみ「特異的」に結合します。

たとえば、表面に物質aをもつ細菌Aが身体のなかに入ってきたとします。もし、体内に抗a抗体があれば、それが特異的に細菌Aの物質aに結合します。

抗体がくっつく相手のことを「抗原」とよび、このとき物質aのことを抗原といいます。

抗体のかたちは?

抗体には、「クラス」という分類があり、かたちと機能によってIgG、IgM、IgA、IgE、IgDの5種類に大別されます。

これらは細かい構造の違いはありますが、基本的な構造は同じであり(下図)4本の鎖が結合したY字の構造になっています。

内側の長い2本の鎖をH鎖(Heavy chain=重鎖)、外側の短い鎖をL鎖(Light chain=軽鎖)といいます。

そして、抗原結合部位のある腕部分をFab部分、反対のおしりの部分をFc部分とよんでいます。

ちなみにY字の両腕の先には、それぞれ抗原と結合する部分があり、1つの抗体(Y字)には2つの抗原結合部位(Fab部分)があります。

抗体の3つの働きとは?

抗原には、大きく分けて①オプソニン化、②中和抗体、③補体の活性化という3つの働きあります。

それぞれがヒトの免疫に非常に重要な役割を果たしています。

①オプソニン化

抗体が異物(抗原)結合して、好中球などの貪食細胞が食べやすいようにすることを指します。この抗体の「異物を味付けする・食べやすくする」働きのことをオプソニン化といいます。

オプソニン化された細菌は好中球に特異的に貪食され、その多数の好中球の残骸が「膿」となってたまります。

②中和抗体

抗体がウイルスに直接結合すると、感染したい細胞に侵入できなくなります(=感染性を失う、ウイルス不活化)。また、細菌が出す一部の毒素などにも結合することで、毒素を中和することができます。

③補体の活性化

詳しくは補体の項で説明しますが、補体の「古典的経路」とよばれる経路のスタートに関わっています。抗原に抗体が結合し、その抗体に補体C1がくっつくことで、古典的経路が活性化します。

活性化した補体は、オプソニン化、ケモカインとしての役割、溶菌現象などさまざまな免疫反応を起こします。

抗体のクラスによる働きの違い

上記に挙げた抗体の機能をすべてもっているのはIgGだけであり、それ以外のクラスの抗体については得意、不得意な機能があります。

IgG IgM IgA IgE IgD
オプソニン化 × ×
中和抗体 × ×
補体活性化 × ×

※IgEはI型アレルギーに関与する抗体ですが、体にとっては悪い方向に働くことが多い。
※IgDの働きについてはほとんど分かっていない。

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