不完全抗原(ハプテン)と完全抗原の違いは?

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免疫学ではじめに登場する「抗原(こうげん)」という物質。

抗原とはいったい何なのか?また、不完全抗原とはいったいどういう抗原なのか?ここですっきりと理解しておきましょう!

すべてのものが抗原になる!

「抗原 : antigen」とは、それに特異的な「抗体 : antibody」と結合できる物質の総称であり、この世のすべてのものが抗原になりえます。

「すべてのもの」ですから、自分自身のからだにあるものでさえ時として「抗原」となることがあります。これを「自己抗原」といいます。

しかし本来は、自己抗原に対しては「抗体がつくられない」または「Tc細胞(細胞障害性T細胞)が攻撃しない」ようなしくみになっています。

何らかの原因で、このしくみが働かないと「自己免疫疾患」となり、私たちは自分の免疫により病気になってしまうのです。

ハプテン(不完全抗原)とは?

抗原は、「特異的な抗体と結合できる物質」でした。抗原が体に入ってくると、体内ではその抗原に特異的な「抗体」を産生し、次回の侵入に備えるしくみになっています。

抗体の産生を引き起こす(=誘導する)性質を、「免疫原性」といいます。抗原のなかで、それ単独で抗体産生を引き起こす(=免疫原性をもつ)ものを「完全抗原」とよびます。

しかし、すべての抗原が抗体の産生を引き起こすわけではありません。抗原のなかには、体内に存在するなんらかのタンパク質に結合することで、「免疫原性」をもつものがあります。

これを、単独では不完全な抗原という意味で、「不完全抗原(ハプテン)」とよびます。そして、ハプテンにくっついた「あるタンパク質」のことを「キャリア(担体)」といいます。

ハプテンの具体例

たとえば、特定の種類の抗生物質にアレルギーをもつ人がいます。

本来、ペニシリン単独では抗体産生を誘発することはありませんが、運悪くペニシリン分子が赤血球表面のタンパク質と結合して免疫原性物質(=完全抗原)となってしまうことがあります。

この場合、ペニシリン分子がハプテンであり、赤血球表面のタンパク質がキャリアとよびます。他に金属アレルギーなども、このようなメカニズムでアレルギーを引き起こすとされています。

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