中和抗体とは?
⇒抗原が生体に対して毒性や感染力などの活性をもつとき,その抗原に結合して活性を減退または消失させる抗体。weblioより
ウイルスがヒトのからだに侵入すると、ウイルスはヒトの細胞に入り込み増殖します。これをウイルスの感染といいます。
このとき、からだの免疫反応としては主に「感染細胞」を破壊する「細胞性免疫」が働きます。
しかし、ウイルス感染でも「抗体」を用いた「体液性免疫」が必要な場合があります。この時に活躍するのが「中和抗体」と呼ばれるものであり、今回はその働きについて学んでいきましょう!
目次
ウイルスの抗体はどうやってつくられる?
ウイルスが体内に侵入し、ある細胞に感染した場合、すばやく感染細胞を破壊しなければどんどんウイルスは増殖してしまいます。
このとき、ウイルスへの防御反応のメインとなるのは、細胞性免疫(Tc細胞やマクロファージが活躍する免疫反応)です。
一方で、抗体をつくる「体液性免疫」も実は少し稼働しているのです。
ウイルスを取り込んだ抗原提示細胞が、CD4+ナイーブT細胞に抗原提示したとき、一部Th2細胞にも分化します。(多くは細胞性免疫にかかわるTh1細胞に分化)
Th2細胞は「抗体産生」を促すサイトカインを産生するので、結果的に「そのウイルスに対する抗体=中和抗体」がつくられるのです。
ウイルスはヒトの細胞のなかに入りこみ複製・増殖します。しかし、基本的に抗体は細胞のなかに入ることはできません。
ということは、この中和抗体はまったく役に立たないのでしょうか・・・?
中和抗体はどうやって働くの?
実は、抗体は細胞のなかに入り込むことはできないため、細胞の外にある抗原(ウイルス)にしか反応できません。
つまり、中和抗体は細胞外に出てきたウイルスにくっつくことで、その効果を発揮します。
ウイルスの中には、感染細胞内で増殖が完了すると、その感染細胞を爆発(融解)させ、いっせいに細胞外に飛び出し、組織や血液内に飛び散っていくものが存在します。
そのようなウイルスを「細胞融解型ウイルス」といいます。具体的には、日本脳炎、デング熱、ポリオの原因ウイルスがこれに属します。
中和抗体は、細胞外に飛び出したこれらのウイルスにすかさずくっついて、他の細胞に感染できないようにするのです。
中和抗体が結合すると、ウイルスは感染したい細胞に侵入できなくなります。(ウイルスの不活性化ともいう)
ウイルス感染でも「抗体」は重要!
以上のように、細菌感染だけでなく、ウイルス感染においても「抗体」はつくられており、一部のウイルスの防御では非常に重要な働きをしています。
また、肝炎ウイルスは細胞融解型ではないのですが、「中和抗体」が産生されないと重症化することが知られています。
どんなウイルスも他の細胞に感染するときには、いったん細胞の外にでる必要があるので、「中和抗体」はどのウイルスに対しても一定の効果があるのです。
また、Tc細胞(細胞障害性T細胞)がウイルス感染細胞を破壊しても、一部のウイルスはまわりに飛び出してきます。
そういったウイルスに対して「中和抗体」が結合することで、全身にウイルスが広がるのを防ぐことができるのです。