人は生まれてから死ぬまでの間、数えきれないほどの抗原(細菌、ウイルス、ゴミなど)にさらされます。
それらのなかには、当然ですが初めて遭遇するものもあるはずです。自然免疫はそれらに対する体を守るための防御反応です。
今回は、自然免疫のしくみと流れをつかんでいきましょう!
目次
「免疫」の本来の意味は?
「私は水疱瘡(みずぼうそう)に一度かかったことがあるから、もう二度とかからない」という話を耳にしたことがあるかもしれません。
このように、ある感染症に一度かかると、その病原体に対する抵抗力が飛躍的に上がり、それ以降感染しなくなる現象を「免疫」といいます。
しかし今では、免疫という言葉の意味が広がり「生体防御の一連の反応」を指すようになり、「自然免疫」という言葉も使われるようになりました。
自然免疫とは?
体にとって初めてのウイルスや細菌が感染した場合、本来は「免疫」をもっていないためそれらに対抗することはできないはずです。
しかし、それでは即座にさまざまな感染症にかかってしまい死んでしまいます。そのため、私たちの体には大まかな防御反応である「自然免疫」を備えているのです。
自然免疫は、非特異的な防御反応であり、体にとって異物と判断されるものをおおざっぱに排除していきます。
一方で、抗体を使った体液性免疫やTc細胞を介した細胞性免疫は、自然免疫と区別して「適応免疫」または「獲得免疫」と呼ばれます。
自然免疫の流れは?
自然免疫の流れは、細菌感染とウイルス感染で少し流れが異なるのでそれぞれ確認しておきましょう!
細菌感染の場合
①細菌が体内の組織に侵入する。
②マクロファージ、マスト細胞、樹状細胞が侵入した細菌(異物)と接触する。
③それらの細胞がTLR(Toll様受容体:Toll Like Receptor)によって「これは細菌だ!」とおおまかに認識する。
④マクロファージ、マスト細胞は種々の炎症性サイトカイン、脂質メディエーター、ケモカインを産生する。
⑤炎症性サイトカイン、脂質メディエーターによって血管が広がり、ケモカインによって好中球が遊走されて集まってくる。
⑥貪食細胞(マクロファージや好中球)が非特異的に菌を食べる。
⇒抗体産生をして、体液性免疫につながる。
ウイルス感染の場合
①ウイルスが細胞内に侵入し、感染する。
②ウイルス感染した細胞は自分がウイルスに感染したことに気づくと、Ⅰ型IFN(IFN-α、β)を産生してウイルスの複製を抑える。
同時に、ウイルスの抗原部分を自分の「MHCクラスⅠ分子」の上にのせて抗原提示をすることで、Tc細胞にメッセージを送る。
③マクロファージ、樹状細胞もウイルスを取り込み、細胞内にあるTLRでウイルスを感知し、Ⅰ型IFNを産生する。
④Tc細胞が活躍する細胞性免疫が活性化するまでの間、IFN-α、βでウイルスの複製を阻害、マクロファージやNK(ナチュラルキラー)細胞は感染細胞を非特異的に破壊する
⇒感染ウイルスに特異的なTc細胞が増えて、いよいよ本格的に細胞性免疫で対抗する。
味方にやさしいNK細胞
NK細胞は各細胞表面にあるMHCクラスIを認識し、それがあると細胞障害をしないようになっています。逆に、自分の細胞であっても身分証明証であるMHCクラスIをもたない細胞は容赦なく破壊します。
ウイルスに感染した細胞やがん細胞はMHCクラスIの発現が低下、もしくは消失しているため、NK細胞による攻撃を受けるのです。
Ⅰ型IFN(IFN-α、β)とは?
IFN-α、βは、ウイルスの複製を抑制する効果のほかに、感染細胞の増殖抑制、マクロファージ、NK細胞、Tc細胞の活性化、抗腫瘍効果、細胞性免疫の増強作用をもっています。
また、ウイルスではない細胞内寄生微生物の発育抑制などさまざまな機能をもっており、臨床的にはウイルス性肝炎の治療薬として応用されています。