薬物間相互作用で興味深いことが
本に書いてあったので
考えていきたいと思います。
「コーラ」と「メトトレキサート」
一見すると、
なんで??ってなる組み合わせ
ですが、実際にあるみたいです・・・
症例からご紹介
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56歳 男性 非ホジキンリンパ腫
【経過】
抗がん剤により寛解導入。
中枢神経浸潤を防ぐため
大量のメトトレキサート(3g/m2)を30分かけて静注。
投与後、尿pHが7.0以下であったため
炭酸水素ナトリウムを投与したが、
時々尿pHは6.5まで低下し、
血清クレアチニン濃度、血中メトトレキサート濃度の上昇をみとめた。
さらにメトトレキサートによる有害事象も出現した。
問診の結果、
330mLコーラを飲用していることが明らかになった。
コーラの飲用を止めたところ、
腎機能は徐々に改善し、血中メトトレキサート濃度の低下とともに、有害反応は消失した。
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正直、これ本当か?
と思うような内容ですが、
一応メカニズム的な記載もあるのでご紹介します。
まずメトトレキサートの排泄は
尿細管分泌による腎排泄が主体です。
メトトレキサートの溶解度は、
尿pHにより大きな影響を受け、
尿pHが7以下になると溶解度が低下します。
つまり、尿が酸性に傾くと
メトトレキサートの溶解度が
下がって析出する可能性があるわけです。
すると、メトトレキサートの一部が
尿細管腔に沈着することで
腎機能障害が起こります。
腎機能障害が起こるということは
メトトレキサートの排泄の遅延、
血中濃度の上昇が起き、
有害事象のリスクが増えるというわけです。
ここで実は 、
コーラを飲むと、10時間以上、
尿pHが低下することが知られています。
通常のコーラと同様に、
「カロリー・フリー」「カフェイン・ゼロ」
のコーラも尿pHを低下させることが報告されています。
結論はまとめると、
メトトレキサート使用中にコーラを飲むと、
尿pHの低下により腎機能障害と
それに伴うメトトレキサートの血中濃度上昇が起こる。
なので、メトトレキサート投与前24時間、
投与中はコーラ飲用を避ける、
という注意がなされているようです。
一応、説明はここまでですが、
あとはいつもの通り、ひとりごとタイムです。
この症例は、大量のメトトレキサートに
よる治療でのトラブルでした。
より一般的なメトトレキサートの
使用法として、リウマチへの適応
がありますよね?
その場合はどうなるんだろう・・・
この溶解度低下というメカニズム
から考えるに濃度が低いときは
問題になりにくいかもしれませんね。
し・か・も、
尿pHを下げるものって別に
コーラだけではないですよね。
他の薬や食品なんかでも
同様のケースは起こりそうな気がします。
う~ん、一応ケーススタディと
して知っておき、大量のメトトレキサートで
治療している方の場合は注意が必要かも、
というレベルですかね。
あとは、一般的に腎排泄であれば
単純に腎機能はみていくということ
で特に問題ないのかなとも思います。
まぁ、ちょっとキャッチーな
組み合わせだったので紹介してみました。
少しでも参考になれば!
では、また。
【参考図書】
疾患別薬物相互作用 日本医事新報社