<ポイント>
①アルコールはBZ系薬の作用を増強させる。
②アルコールはBZ系薬の血中濃度を上昇させる。
③アルコールとBZ系薬を併用すると中枢抑制作用が増強し、健坊や朦朧状態が出現する。
ちょっと専門向けの記事になります。
現在使われている睡眠薬で、
ベンゾジアゼピン系(BZ系)薬は
かなりのシェアを占めています。
アルコールはBZ系薬の作用を増強するため
併用は避けなければなりません。
特に、短期の記憶を失う健忘や朦朧状態では、
事故や他者を巻き込むような有害事象にまで
発展することがあるので注意が必要です。
◆薬力学的機序による相互作用◆
BZ系薬はGABA受容体に結合して、
GABAの受容体へ親和性を増加させ
効果を発揮します。
一方、アルコールはBZ系薬のGABA受容体への
結合性を高めることで、その作用を増強します。
フローチャートとしては、
ベンゾジアゼピン系睡眠薬
↓←アルコール
ベンゾジアゼピン受容体対する結合増大
↓
GABAのGABA受容体に対する親和性増大
↓
Cl-の細胞内流入量増加
↓
中枢神経抑制作用増強
↓
健忘・朦朧状態発現
◆薬物動態学的機序による相互作用◆
BZ系薬は肝で代謝を受けますが、
第1相反応(脱メチル化、水酸化反応)を受け、
さらに第2相反応(グルクロン酸抱合)を受けます。
第1相反応には、CYPが関与しています。
一方で、アルコールは肝において、
アルコール脱水素酵素(ADH)やミクロソーム
エタノール酸化系(MEOS)などにより代謝されます。
多量にアルコールを摂取すると、
MEOSによる代謝も増加します。
MEOSで働く主な酵素はCYPなので、
BZ系薬の代謝が競合的に阻害されます。
これによりBZ系の血中濃度が上昇し、有害作用が生じます。
実際にトリアゾラムとアルコールの併用で、
AUCが20%以上増加したという報告もあります。
実際にはその増加分以上に、精神運動機能への影響が大きかったようです。
一方、それらの併用で血中濃度に
変化はみられなかったものの、
精神運動機能が悪化したとの報告もあります。
つまり、BZ系薬とアルコールの相互作用は、
薬力学的な影響が大きく影響していると考えられます。
以上、アルコールの睡眠薬への影響は、
代謝への影響より、作用点における
薬力学的な増強効果が大きいと考えられます。