利尿薬×尿酸値
※今回はちょっと専門的な内容も含みます!
まずは尿酸の復習からです。
尿酸は、内因性または食事由来のプリンヌクレオチドの最終代謝産物であり、主に肝臓のキサンチンオキシダーゼの働きによって産生されます。
このキサンチンオキシダーゼを阻害する薬が次のものです。
・ザイロリック(一般名:アロプリノール)
・フェブリク(一般名:フェブキソスタット)
では、なぜ尿酸値が高いとよくないのか?
それは、まず痛いからです(笑)。
これはいわゆる痛風発作(関節炎)といいます。
それ以外にも、
結石(尿細管・尿路結石)、腎臓病、高血圧、心筋梗塞
など重篤な疾患の危険因子(リスク)になると言われています。
こんなに悪いものがなぜ体の中でできるでしょうか?
尿酸には実はいい効果も知られています。その一つが強力な抗酸化作用です。
尿酸は生体内で老化や様々な疾患の防御因子としても知られていて、
尿酸値が低下すると、アルツハイマー型認知症、パーキンソン病、多発性硬化症など神経変性疾患を起こしやすくなるという報告もあります。
では、本題に入りましょう。
尿酸の排泄は主に腎臓で行われます。
尿酸の全排泄量の約3分の2が腎から尿中に排泄されることが知られています。
その機構として、次のようなステップがあります。
①糸球体濾過
②再吸収
③分泌
④分泌後再吸収
今回注目するのは③の分泌です。
(http://www.j-pharma.com/b4.html)より引用
腎で尿酸分泌(排泄)に関わるトランスポーターには、
上皮細胞の血管側膜に存在するOAT1およびOAT3、
尿細管側に存在する電位依存性の
有機アニオントランスポーター4(NPT4)があります。
OAT1およびOAT3は、
ジカルボン酸(α-ケトグルタル酸など)との交換で
尿酸を上皮細胞内に取り込みます。
それによって電位差駆動性のNPT4が活性化され、
尿細管腔へ尿酸分泌が起こると推測されています。
このNPT4の基質で,
強い親和性を示すループ系利尿薬やチアジド系利尿薬は、
NPT4による尿酸分泌を競合阻害し、血清尿酸値を上昇させるのです。
もちろん、これら以外にも尿酸の排泄に影響を与える薬剤は多くあります。
新しい薬を飲みはじめてから、尿酸値の上昇を指摘された場合は、
それらの影響を考えてもいかもしれません。
<尿酸値に影響を与える薬のまとめ>
(1)腎尿酸再吸収
・URAT1(モノカルボン酸と尿酸を交換して尿酸を再吸収)
【阻害薬】⇒尿酸値↓
ベンズブロマロン、プロベネシド、ロサルタン、フェノフィブラート、インドメタシンなど
【活性化薬】⇒尿酸値↑
モノカルボン酸(乳酸など)、芳香族カルボン酸(ピラジンカルボン酸(ピラジナミドの活性型)、ニコチン酸
・URATv1(電位差により尿酸を取り込む)
【阻害薬】⇒尿酸値↓
ベンズブロマロン(最も強力)、プロベネシド、ロサルタン
(2)腎尿酸分泌
・NPT4(電位差により尿酸を排泄)
【阻害薬】⇒尿酸値↑
ループ利尿薬、チアジド系利尿薬
・ OAT1、OAT3
(ジカルボン酸・有機アニオンと尿酸を交換して尿酸を分泌)
【阻害薬】⇒尿酸値↑
ベンズブロマロン、プロベネシド
(プロベシドのOAT阻害作用が相互作用の原因となる。
⇒インドメタシン、メトトレキサート、ペニシリンなど)