【アスピリンとCOX1】
アスピリンとNSAIDsの
抗血小板作用はどこが違うのか?
何度か取り上げてはいますが、
今回は決定版!ということで
またこのテーマを取り上げたいと思います。
目次
アスピリンとNSAIDsではCOX1阻害機構が全く異なる!
アスピリンやNSAIDsにより
血小板のCOX1が阻害されると、
TXA2合成が抑制され、、血小板凝集が抑制されます。
しかし、これらのCOX1の
阻害機構は異なっているために、
両者の作用の違いが生まれます。
なかなか興味深いところ
なので、少し詳しくみていきましょう!
NSAIDsによる血小板への作用は?
NSAIDsは、COX1酵素タンパク質
のポケット内にある触媒部位での結合を
アラキドン酸と競合して阻害します。
「可逆的競合阻害」ともいいます。
つまり、アラキドン酸と触媒部位で
椅子取りゲームをするイメージですね。
したがって、NSAIDsによる
COX1阻害は投与中のみで
起こるのです。
特に半減期の短いNSAIDs
であれば、治療上意味のある
抗血小板効果は得られません。
つまり、NSAIDsを
抗血小板薬として使用することは
できない、ということになります。
アスピリンによる血小板への作用は?
一方で、アスピリンは、
COX1の触媒部位の近くにある
セリン残基を不可逆的にアセチル化します。
これが大きな立体障害になるため
アラキドン酸が触媒部位にアクセス
できなくなり効果を示します。
これは不可逆的な反応であり、
アラキドン酸が近寄れなくなるため、
COX1はそれ以降働くことができなくなります。
ゆえに、アスピリンによる
抗血小板作用は血小板の寿命
が終わるまで続くのです。
血小板の寿命は3~7日と
言われており、効果もそのぐらい持続します。
(血小板は1日約10%が再生する)
※だから、手術前では、
アスピリンを1週間くらい前
から休薬することがあるんですね!
NSAIDsとアスピリンを一緒に飲むとどうなる?
最近の研究報告で
有名になってきていますが、
NSAIDsとアスピリンの併用に関する話題です。
上記で説明したメカニズムを
踏まえて考えると、これらは互いに
ある程度近い部分で作用しています。
近い部分で作用している
ということは、「相互作用」が
起こりうるということですね。
特にアスピリンとの相互作用が
指摘されているNSAIDsには、
イブプロフェン、フルルビプロフェン、
スプロフェン、インドメタシンなどがあります。
イブプロフェンなどが
COX1タンパク質内の触媒部位
に結合すると、どうなるでしょう?
イブプロフェンの立体構造が
障壁となり、アスピリンが作用部位
(529位のセリン残基)に到達できなくなります。
つまり、セリン残基をアセチル化
できないために、アスピリンの
抗血小板効果は発揮されなくなってしまいます。
一方、ジクロフェナクNaでは、
このような阻害作用は認められません。
このことから、
NSAIDsの中でも、分子構造の違い
によってアスピリンとの相互作用は異なるのです。
また、選択的COX2阻害薬では
アスピリンの抗血小板作用への
影響は報告されていません。
よって、低用量アスピリンによる
抗血小板療法を行っている場合、
鎮痛薬の使用には注意する必要がありますね。
イブプロフェンなんかは、
医療用だけでなく、一般用医薬品
にも含まれているので、要注意!です。
(イブ、ナロンエース、ベンザブロックIP、パブロンNなど)
こうやってみてみると、
薬の構造や作用機序から臨床
につなげて考えることもできますよね。
今後も研究が進んで、
学術と臨床がリンクしてくると
おもしろいな~って思います。
今回はこのへんで。
では、また!
参考図書
薬の相互作用としくみ 全面改訂版