【保存版】スタチンの相互作用を簡単に覚えよう!

いま、世界でもっとも使われている薬「スタチン」。

その飲みあわせはしっかりとチェックされているでしょうか?

薬の副作用が起こる原因として、薬が想定よりも効きすぎてしまうということがあげられます。

有名なスタチンの副作用には「横紋筋融解症」があります。

早期に対処できれば回復するケースもありますが、発見が遅れたり、症状が重篤な場合には「腎不全」などを引き起こし、死に至るケースもあります。

今回は、スタチンの相互作用について、基本から覚えていきましょう。

目次

スタチンの代謝経路をマスターせよ!

薬物間相互作用では、なんといってもCYP(代謝酵素)をおさえておく必要があります。

すべて覚えておくことのは難しいので、各スタチンの主要な代謝酵素を覚えましょう。

シンバスタチン(リポバス) CYP3A4
アトルバスタチン(リピトール) CYP3A4
フルバスタチン(ローコール) CYP2C9
ピタバスタチン(リバロ) CYP2C9(少し)
プラバスタチン(メバロチン) なし
ロスバスタチン(クレストール) なし

このうちLDL低下作用の強い、いわゆる「ストロングスタチン」はアトルバスタチン、ピタバスタチン、ロスバスタチンです。

ピタバスタチン(リバロ)、プラバスタチン(メバロチン)、ロスバスタチン(クレストール)はCYPでほとんど代謝されず、未変化体のまま胆汁排泄されるため、代謝酵素(CYP)を介した相互作用は少なめと考えてよいです。

現状、もっとも情報が多いのはCYP3A4を介した相互作用です。

CYP3A4を主要代謝酵素としているシンバスタチンとアトルバスタチンは要注意です!

14員環のマクロライドに注意しろ!

それぞれの代謝酵素をおさえたら、代表的な相互作用を頭にいれておきたいですね。

もっとも有名な相互作用を起こす薬剤に「マクロライド系抗菌薬」あります。

マクロライド系には、構造式の違いから14員環と15員環がありますが、注意したいのが14員環のほうです。

クラリスロマイシン(クラリシッド、クラリス)、エリスロマイシン(エリスロシン)が14員環マクロライドで、強いCYP3A4の阻害作用があります。

上も表と照らしてみると、注意すべきスタチンは、アトルバスタチンとシンバスタチンですね。

クラリスロマイシンとの併用により、シンバスタチンのAUCが10倍、アトルバスタチンのAUCが1.8倍~4.5倍

エリスロマイシンとの併用により、シンバスタチンのAUCが6.2倍、アトルバスタチンのAUCが1.3倍、ピタバスタチンのAUCが2.8倍(OATP1B1を介した相互作用:後に触れます)

になったとの報告があります。

学習リンク
AUCってなに?っていう場合はこちらへどうぞ→超分かる薬物動態学~AUCとは?~

非常にこわいですよね。

スタチンとマクロライド、どちらが治療上優先されるかはケースbyケースですが、敢えてこの組み合わせを選択する必要はないと感じますよね。

ちなみに、これらのスタチンを服用中であれば、CYP3A4阻害作用のない15員環マクロライドのアジスロマイシン(ジスロマック)を選択するのもよいでしょう。

イトラコナゾールに注意せよ!

これも相互作用の代表格のひとつですね。

真菌治療薬のイトラコナゾール。

これも強力なCYP3A4阻害剤として有名です。

イトラコナゾールとの併用により、シンバスタチンのAUCが10倍以上、アトルバスタチンのAUCが3.2倍、ロスバスタチンのAUCが1.4倍になったと報告があります。

ちなみに、添付文書で「併用禁忌」となっているのはシンバスタチンのみ(H28時点)ですが、相互作用に関して添付文書の「禁忌」や「注意」は当てにできません。

AUCが数倍に上昇するものでも、ただの「注意」となっている場合が多くあります。

「怪しきは避ける」が、相互作用で健康被害を避けるためにとっても重要なことです!

ちなみに、ミコナゾールに関してもシンバスタチンでは併用禁忌になっているため、併用は避けるべきでしょう。

グレープフルーツに注意せよ!

食品だって侮れません。

グレープフルーツジュースや柑橘系を頻繁に摂取している方にも注意が必要です。

グレープフルーツにもCYP3A4を阻害する作用があり、シンバスタチンのAUCが3.6~16倍、アトルバスタチンのAUCが2.5倍になったと報告があります。

マクロライドと同等、またはそれ以上の相互作用が出現するケースもあるわけですね。

ただし非常に個人差が大きい相互作用であり、また柑橘の品種や摂取頻度によっても大きく変化するため、その影響には大きな差があると理解しておきましょう。

どうしてもグレープフルーツや特定の柑橘類が手放せないという方は、医師に相談して相互作用の少ない薬剤に変更する必要がでてくるかもしれません。

現状ではこういったことに関して、真剣に考慮する先生は少ないかもしれませんが、アドヒアランス、そして安全性ということを考えれば馬鹿にできない項目かと思います。

シクロスポリンの恐怖!新たな刺客「OATP1B1」

ここまでは、CYP3A4がメインでしたから、それに関係ないスタチンは相互作用は気にしなくていいかな~なんてつい油断してしまいますよね。

そんなときにガツンとヤバイ相互作用をかましてくるのがシクロスポリン(サンディミュン、ネオーラル)です。

こいつがやばすぎる。

そのAUCの増加率は、それぞれのスタチンでこの通り。

プラバスタチン→5~12倍、シンバスタチン→3~8倍、フルバスタチン→3倍、アトルバスタチン→8.7倍、ピタバスタチン→4.6倍、ロスバスタチン→7.1倍

絶対に一緒に飲みたくないですよね。怖すぎます。

簡単にいえば、シクロスポリンと一緒に飲むだけで通常の何倍もの量の薬を飲んだことになっているわけですから。

で、なぜこんなにすべてのスタチンに影響を及ぼすかというと、最近話題になってきている「有機アニオントランスポーター」をシクロスポリンががっつりと阻害するからです。

このトランスポーターの1つであるOATP1B1は、肝細胞の血液側膜上に存在していて、血液中の薬物を肝臓内に取り込む作用をしています。

つまり、こいつが働くことで血液中のスタチンを肝臓内にある程度回収する役割をしているというわけです。

だけれど、シクロスポリンによってOATP1B1の働きが抑えられることで、本来よりも多くのスタチンが血液中に循環することになってしまうわけです。結果的に、副作用の原因になります。

OATP1B1は、ちょっと前に触れたエリスロマイシンとピタバスタチンの相互作用にも関わっているそうで、知らないところで悪さをしている可能性もあります。

まだまだ、このあたりは発展途上ですから、常にフォローしていくと同時に、やっぱり薬を併用するときには、絶対に何らかの相互作用はあるんだ!っていう覚悟でいたほうがよいですね。

はっきりいって、これらの相互作用はすべて覚えておいてフォローすることは相当厳しい。

なので、明確に情報が出力されるような監査システムが必要だと思うんです。

患者さんが飲んでいる薬を他院のも含めてすべてデータ入力して、コンピュータ上でマッチングして、情報があるものに関して一覧で表示できるようにします。

それを確認して薬剤師が判断して、必要時にはDrに情報提供するという環境が大切になってくると思います。

それに似たシステムがある薬歴システムもあるですが、まだちょっと使いにくい。

このあたりを今後どんどん強化していきたいですよね。

まとめ

最後は今後の展望ということで話が少しそれましたが、今回触れた内容はほんの導入であり、一部でしかありません。

ただ一度に全部の相互作用を覚えることなんて不可能ですし、それを一つ一つDrに確認するなんてことも現実的ではありません。

だから、やっぱり有名なところから確認する習慣をつけていって、禁忌は見逃さないっていうのが最低限重要になってくると思います。

今回のスタチンも、まずはシンバスタチンとアトルバスタチンが相互作用多そうだなっていうイメージをもっておいて、飲んでいる方の併用薬に注意する。

禁忌でなくても、影響の大きさから考えるとシクロスポリンなんかは一度問い合わせが必要ですよね。

そういう意識をもつことからはじめていくのがよいかなと思います。

さじ加減に関しては、明確な基準がない以上、それぞれの薬剤師の判断になります。禁忌でない以上は併用は可能なわけですから、副作用のモニタリングを強化する必要があります。

このあたりDrの理解を得て、もっと活発に連携できるとよいですよね。当然Drもこういう情報なら欲しいでしょうし、フォオーしきれない分野だと思いますので。

それでは、この辺で今回は終わりにしたいと思います。

最後までお読みいただきありがとうございました!

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