MHC分子による抗原提示とは?

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MHC分子とは?

MHC分子とは簡単にいうと、細胞が身分を証明する「名札」です。

私たちの体を構成する多くの細胞(核をもつ有核細胞)は、自分に特有のMHC(主要組織適合遺伝子複合体:major histocompatibility complex)という遺伝子をもっています。

その遺伝子からつくられる分子(MHC分子)を細胞表面に発現させて、名札のように表現しています。

MHC分子は「私は自分自身の細胞です!攻撃しないでください!」という身分証明であり、「こんな敵がいますよ!」という「抗原提示」を行う働きもあります。

ちなみにヒトのMHCは、ヒト白血球型抗原 (HLA)ともよばれることがあります。

MHC分子の種類と働きは?

MHC分子には、大きく分けてMHCクラスⅠとMHCクラスⅡの2種類があります。

MHCクラスⅠ分子

ほとんどすべての有核細胞がもっているMHC分子です。MHCクラスⅠ分子はTc細胞(細胞障害性T細胞、CD8陽性T細胞)に抗原提示するときに必要な身分証明です。

私たちが生きていると、どんな細胞もウイルスに感染する可能性があります。

感染細胞がその情報をTc細胞へ伝えるためには、すべての細胞がこのMHCクラスⅠ分子をもっていなくてはいけないのです!

すなわち、特に免疫専門の細胞でない上皮細胞でも、MHCクラスⅠ分子があることで、Tc細胞に対しては抗原提示することが可能になるのです。

MHCクラスⅡ分子

一方で、免疫を専門とする細胞には、MHCクラスⅡ分子をもつ細胞があります。具体的には、マクロファージ、樹状細胞、B細胞がMHCクラスⅡ分子をもつ「抗原提示細胞」たちです。

これらの細胞は、抗原提示にかけては専門職のため「プロフェッショナル抗原提示細胞」とよばれることもあります。

MHCクラスⅡ分子は特別な身分証明であり、CD4陽性ナイーブT細胞に抗原提示することができます。

これによりCD4陽性ナイーブT細胞は、ヘルパーT細胞(Th1、Th2、Th17)、または制御性T細胞(Treg)のどれかに分化します。

もちろん、抗原提示細胞は有核細胞なのでMHCクラスⅠ分子をもっており、Tc細胞にも抗原提示できます。

「CD4」「CD8」とは?

T細胞上にある分子であり、MHC分子と結合する「補助受容体:coreceptor」とよばれる分子です。

補助受容体はMHCからの抗原提示を受ける際に必須の受容体であり、結合役としてだけでなく、互いの細胞内へのシグナル伝達にも深く関わっています。

CD8陽性T細胞はMHCクラスⅠ、CD4陽性T細胞はMHCクラスⅡを認識して、抗原提示細胞からの情報を受け取ります。

◆まとめ◆

MHC分子は、各細胞にある身分証明証であり、抗原提示を行うときにも働く。

上皮細胞などの一般的な細胞はMHCクラスⅠ分子をもち、Tc細胞(CD8陽性T細胞)に抗原提示を行うことができる。

一方、免疫専門の抗原提示細胞は、MHCクラスⅡ分子をもっており、特別にCD4陽性のT細胞にも抗原提示することができ、ヘルパーT細胞へと分化させることができる。

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