「患者」は薬について学んだほうがいいですか?

興味深いメッセージをいただいたので、シェアしたいと思います。

精神科に通院されている方で、自分が処方してもらっている薬についてネットや書籍を使って勉強されているようです。

現在6種類の薬を処方されていますが、自ら減薬を試みた結果、1種類のみで体調をコントロールされているとのことでした。

また、自らの薬の知識でもって医師に相談したところ、そのまま強制入院させられてしまったという強烈な経験をお持ちの方です。

今回もらった質問としては、

「いま薬の相互作用について詳しく調べているが、素人の自分が勉強することに意味はあるのか?

また、精神系の薬の相互作用というのは、そもそも予測は不可能なのではないか?」

といった内容でした。

これに対して、僕自身が考えたことを少し書いていきます。

目次

患者自身が勉強することは?

患者が積極的に医学的な知識を手に入れること。

私はこのことに関して、よくもあり、悪くもあり、だと思います。

学ぶこと、それ自体はすごく良いことだと思いますが、いくつか注意すべき点があると思います。

知識の使い方を間違えると、「自己責任」と「不自由」が付きまとうかもしれません。

具体的なケースでは、今回の相談者のように医師に取り合ってもらえず、頭がおかしいと判断され(これ自体が歪んた医療ではありますが)、「強制入院」させられてしまったり。。。

そうでなくても、医師から見放されてしまったというパターンもよく耳にします。

正直、専門家からすると「へたに知識のある素人」は面倒な対象になってしまうケースが多いのではないでしょうか。(強制入院の件も、もしかするとこの対象にされてしまったのかもしれません。)

もちろん、それは専門家の怠慢以外の何物でもないわけですが、たとえば医療の現場において「医師」は絶対な立ち位置にあります。

患者は医師から見放されたら、薬はもらえませんし、治療を受けることはできません。

この構造に問題があるといわれても、現状ではどうしようもありません。

ここを理解したうえでアクションを起こしてほしいのです。

一般の方が自ら勉強されるのは大いに結構だし、私は「自分の健康を守る」という意味でも必須だとすら思っています。

ですが、その得た知識の使い方には十分に注意してほしいと思います。

誰でもすぐに専門家になれる時代

今の時代、ネット、書籍などから情報はいくらでも手に入ります。

そして、ある特定の分野なら数日程度で相当詳しくなることもできるでしょう。

しかし、その特定の知識を得たからといって、すぐに専門家気取りをして「自分の考えが正しいのだ!」という姿勢は危険です。

ある知識や情報を手に入れたときに、それをどの程度の深みをもって理解できているか?は常に意識したほうがよいです。

また、独学で得た知識に関しては「権利」をもたないということも理解しておく必要があります。

たとえ、医師以上のあらゆる医学に関する知識をもっていても、薬は処方できないし、診断することはできないのです。

その知識を自己責任において、自分で使っている分にはよいのですが、他人の病気をみたりしたら、それは罰せられるし社会的には評価されません。

少し脱線しましたが・・・(笑)、

何を言いたいかというと、うまく折り合いをつけたほうがいいですよ、ということなのです。

独学で勉強されるのは素晴らしいですし、それ自体は否定しませんが、資格のある専門家(医師など)と戦ったところで得はないのでは?ということです。

処方された薬を自己判断で飲まなかったり調整したりすることは、患者が納得できる説明をしていない医師の責任もあると思いますし、身体にはよい方向に転ぶこともあるかもしれません。

ですが、それは自己責任だということは忘れないようにしてください。

なお、その状態で身体に何かトラブルがあれば、正確な診断や治療方針を決めることは困難になります。=医師の手には負えなくなることもあります。

もちろん、医師の言う通りにしたら、何かトラブルがあったとき誰かが責任をとってくれるかどうかは、それはケースバイケースです。(公的な補償制度はありますが、失った健康はもどらないこともあるでしょう。)

「私は、自分が納得できない状態で治療は受けないし、薬も飲まないぞ!」

そういう気持ちも当然あると思いますし、むしろ自然な態度だと思います。

でも、もし仮にその選択をした場合には、「結果」に対しては責任をもたなくてはいけません。誰のせいにもできないということは、十分に理解しておく必要があります。

また、誤った情報や自らの浅い知識で、間違った判断をしてしまうリスクもあるでしょう。

※この間の健康情報サイトWelqの問題にもからんできます。

「welq騒動」「まとめサイト問題」から考える~ネット時代を生き抜く方法

https://next-pharmacist.net/archives/6000

そういったことも含めて、自分で判断し、選択したいということであれば、それは仕方のないことではないかと思います。

薬の相互作用は正確に予測できるのか?

薬の相互作用を突き詰めることはできますか?という質問に対してですが、私は「不可能」だと思っています。

予想はできますが、ほぼ博打みたいなものだと受け止めたほうがいいです。

薬どうしの相互作用については、少しずつ明らかになってきていますが、ほんの氷山の一角で、分かっていないことが多すぎますし、研究も部分的にか進んでいないです。

そもそも数千?数万?ある薬の組み合わせは無限ですし、その機序も一筋縄にはいきません。

現状においては、「併用禁忌」や「併用注意」など比較的よく解明されている組み合わせに注意するほかありません。さらに一歩進んで、薬理学・薬物動態学の知識の知識があれば、リスクに関しては予想することもできるでしょう。

どのくらい影響があるのか?という「程度問題」は完全な個人差ですので、飲んでみてどうなるかというある種「賭け」の要素が大きいということはお伝えしておきます。

薬物相互作用に詳しい書籍も出版されてきています。

少々高いですが、最新の内容が分かりやすく記載されているので、興味があればぜひ。

P.S.

メールいただき返信をしたのですが、アドレスが間違っており届けることができません。

こちらをご覧になられたら、再度お返事いただければ幸いです。

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コメント

  1. 猫好き より:

    患者さんが薬の知識を知れるようになった現代、自分の罹患している疾患に対して興味を持つのは当たり前のことになったと考えます。
    そのうえで、自分の治療としての認識が強くなり、医師や薬剤師に対して、質問を行う機会も多くなっているのではないかと思います。
    そんな中で、患者さんは、専門家ではないことから来る中途半端な知識を振りかざすこともあると思います。
    でも、そんな患者さんを正しい知識に引き戻せるのは、医師や薬剤師といった医療の専門家であると考えます。
    患者さんが主体的に治療に向き合えるように、頑張っていけるように、健康のサポートをしてあげれるのは、医療関係者であるということを、関係者自身がきちんとわかった
    上で、サポートしてあげれる体制に持っていけるようにすることが必要であると思います。

  2. 海部麿 より:

    こんにちは、相談です

    私は心療内科に通っている頃に高血圧症と診断されました。
    当初はカルブロック、今は内科でレザルタスHDを処方されています。
    毎日血圧を計っていますが、今年の夏になると上が100より少し上、下は80より下になりました。
    軽い熱中症になり、もっと下がったこともあります。
    医師に話しましたが、処方は変わりません。
    必要性を感じないこともあり飲み忘れが増えました。
    飲まなくても血圧はあまり変わらないのですが、上が140を超えるときには飲みました。
    するとまた正常に戻り何日か過ごし、血圧を見ながら服用するスタイルになり、服用の頻度はかなり減っています。 
    こんなこと、お医者さんが知ったら怒るだろうと思います。
    弟からも叱られました。
    しかし、レザルタスを飲まないと頭痛もなくなり、血圧の調子が良いのに薬を飲む気持ちにはなれません。
    もともと、血圧が上がったのは心療内科の薬の副作用だったのではないかな?とも考えます。
    これからは毎日血圧ノートをつけて、その上で専門医を訪ねてみようと思っているところなんです。 
    何年も同じ処方で、変化にも対応してくれない場合は、患者は自分で勉強するしかありません。副作用のない薬はないですから。
    私、間違ってますか?

    • しゅがあ より:

      海部麿 様

      降圧薬には、血圧を下げる以外にも臓器保護作用がありますよ、といった説明はできますが、基本的に血圧が下がったのであれば飲む必要はないと私は考えます。

      ただし、服用中の血圧をみて正常だからやめるという発想をする人がいますが、それは間違いです。

      あくまで、降圧薬を飲んでいて過度な血圧低下がみられた、と判断される場合には中止を考え、中止後その推移はどうなのか?という観察が必要です。

      もっとも、血圧をどの程度下げたほうがいいのか?という根本的な問題もありますが。
      私個人的には150~160くらいであれば薬は飲みませんね。
      体は必要だから血圧をあげている、という側面をまず考察します。

      とりあえず運動と基本的な塩分制限で様子をみて、それでも超えてくるようであれば薬も考えようかなという感じです。
      (これはあくまで個人的な見解です)

      私が海部麿さんの立場なら、一旦薬は中止してどの程度まで上がるかを自分で確認します。上記の条件であればそのまま中止、上昇傾向であれば量を減らすのを検討します。
      1日おきというのは、成分の性質上効果が不安定になるかな〜という印象です。
      私は定常状態も考慮して、適正な量にカスタマイズしますね。

      責任はとれませんし、明確なエビデンスなどありませんが(そもそも私はエビデンスよりも頭で個別に考える理論派なので)、何か参考になれば幸いです。

      とにかく薬は自分で納得して飲むことです。そして、どんな結果になっても自己責任です。

  3. 海部麿 より:

    しゅがあさん、ありがとうございます。

    血圧は、しっかり記録を取ってみます。
    食事と運動に注意して、肥満も治します。
    去年、セカンドオピニオンでお世話になった女医さんから
    「あなたは肥満が無くなれば血圧も下がるよ」と言われました。

    心療内科の薬をやめてからは、体調が良いです。
    うつに戻る気配もありません。
    もっともっと健康になりたいです。

    • しゅがあ より:

      考えれば、すべてのことが明確になるとは言えないですが、
      分かってはいるのに目を背ける、ということが人は往々にしてあります。

      運動は間違いなくメンタルにもよい影響を及ぼします。
      私も行き詰まったときにはランニングやウォーキングでリフレッシュしています。

      ぜひシェイプアップして薬から卒業してください。
      応援しています。