うつ病と薬の使い方

抗うつ効果には差がない

現在のうつ病の薬物治療の主流は。。。
SSRI、SNRI、NaSSAなど新規抗うつ薬である。

これってはっきりと効果の違いはあるのか?
これは気になるところ。

それもそのはず。はっきりと違いが明記されているソースはないのだそう。
日本うつ病学会の治療ガイドライン
「大うつ病性障害.2012 ver.1」でも新規抗うつ薬の間では、
「有効性、忍容性の両面で、臨床的に明確な優劣の差はない」
と明記されている。

要は、医師の好みということになる。
「副作用や相互作用、用法などが抗うつ薬によって異なる。患者によって合う薬も違うのでそれらを考慮して薬を選択する。」
こういう観点で選択する医師もいるようだ。

相互作用の問題は確かにある。
たとえば、ルボックス(フルボキサミン)とかはテルネリン、ロゼレムは併用禁忌になっている。
そういう「飲み合わせ」という意識をもって選択していくのは結構大事な視点かもしれないし、薬剤師的にも勉強しがいのあるところかなと思う。

そして、もうひとつ。
新規抗うつ薬が出たんだから、副作用が多い三環系とかもういらなくない?って思ったことはあるのではないだろうか?
その理由は多くの専門家が口をそろえて言う、
「三環系抗うつ薬の方が抗うつ効果が強い」ということだそうだ。
だから、抗コリン作用など副作用が強くても難治性のうつには必要な存在ということ。

抗うつ薬の使い方

「単剤投与が原則。単剤を最大量まで増量して6~8週間使い、効かなければ次の薬に置き換える」

ただし、注意すべきは日本の抗うつ薬の承認用量は米国で承認用量より少ないということ。
これがある意味、「多剤併用」の原因になっているのかもしれない。
4~5剤併用なんてのも精神科では珍しくはない。
これは専門家曰く、明らかに多すぎるようだ。
まあ常識的に考えてもおかしいのは分かっているんだけど、誰も文句を言えない。
最終的には患者本人が知識をつけて選択しないと。

ひとつ面白い用語がある。
「カリフォニアロケット燃料!!」
rocket

 SNRI×NaSSA

NsSSAは
「セロトニン神経末端とノルアドレナリン神経末端のα2受容体を抑制して、各神経からのセロトニン、ノルアドレナリンの放出を促進する」
そして、シナプス間隙に溜まったセロトニン、ノルアドレナリンをさらにSNRIで再取り込み抑制しちゃうと。
これでドパミン系も活性化できるそうだ。

<実際の使用例>
70代高齢女性。
首から肩、手にかけての痺れや痛みあり。
複数整形外科受診するも原因分からず。
ロキソニン、リリカ、トラムセット服用も改善せず。

信愛クリニックの問診で、患者には次のような特徴があった。
「頻回の中途覚醒があり、朝に熟睡感がなく、最近は何も楽しいことがなくて体の不調ばかり気になる状態だ。」
つまり、うつエピソードだ。

これを聴いてDrは2つの薬を処方した。
デュロキセチン(サインバルタCap 20mg 1T)=SNRI
⇒ジンジンする神経性の痛みに効果を発揮することが多い。

ミルタザピン(リフレックス、レメロン15mg 1T)=NaSSA
⇒眠気の副作用が強いが、それがかえって眠りの浅い高齢者の睡眠リズムの乱れを回復させるのに有効。

これらの併用で患者は、「あんなにしつこかった痺れが全然気にならなくなりました!」とにこやかにお話ししていったそうだ。

こういう使い方もある。
しびれとか痛みっていうのは、精神的なところから感じることも意外と多いんではなかろうか?
今後は、痛み=痛み止めではなくて、こういう少しひねった薬の使い方っていうのも増えてくるかもしれない。

参考:日経DI 2013.2

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