硝酸イソソルビドと一硝酸イソソルビド
ってありますよね?
結局のところ、
この違いってなんなんだろう・・・
って思っていたんです。
それについて
英語の本ひっぱりだしてきて、
ちょっと勉強してみました。
興味のある方はぜひチャレンジを^^
こういう本を大佐のように
「はっ!読めるぞ!?」ってなりたいものです。
とまぁ、冗談はここまでにしておいて・・・
その答えは少し分かったんですが、
NOと硝酸薬の薬理についても
復習したんで、シェアしていきます!
まず、そもそも論の
一酸化窒素(NO)なんですが、
体でどのように作用するかってところからです。
まずNOがつくられる場所は、
血管平滑筋細胞ではなく、
血管内皮細胞です。
アセチルコリンやブラジキニンなどの刺激
↓
細胞内Ca濃度↑
↓
Ca-カルモジュリン複合体形成
↓
血管内皮型の一酸化窒素合成酵素
=通称eNOSを活性化
↓
アミノ酸のL-アルギニンから
NOを生成
↓
血管内皮細胞からNOが拡散して
血管平滑筋細胞に届く。
で、血管平滑筋における
NOの作用ってのは2種類あります。
①グアニル酸シクラーゼの活性化
②Ca依存性Kチャネルの直接的開放
【①の経路の詳細!】
グアニル酸シクラーゼの活性化
(ヘム部分に結合)によりGTP⇒cGMPが生成
↓
cGMPがミオシン軽鎖脱リン酸化酵素を活性化
↓
ミオシン軽鎖からリン酸が抜かれる
↓
ミオシン-アクチンの架橋形成が弱まる
↓
平滑筋が弛緩する
↓
血管拡張する
【②の経路の詳細!】
Ca依存性Kチャネルを活性化
↓
K+が細胞外に流出
↓
膜の過分極が起こる
↓
平滑筋細胞が持つ電位依存性Ca2+チ ャネル活性が低下
↓
平滑筋の細胞内Ca2+濃度が減少し、筋が弛緩する
↓
血管が拡張する
以上、簡単にですが、
NOの作用メカニズムについてでした!
では、硝酸薬って何なのか?
というと、薬としてNOを補給してやる
という目的で使われるわけです。
なので、他の薬のように
それ自体がどこかの受容体にくっついて
作用する、というわけではありません。
あくまで、NO供与体として働く
というわけです。
ニトログリセリン、硝酸イソソルビド
構造的にR-NO2と表現できて、
最終的にNOを遊離して効果を発揮するのです。
【NOを遊離するまでの機序は?】
血液中に入ったR-NO2
↓
血液中 or
血管内皮細胞内において
①酵素が関与した反応
アルデヒドデヒドロゲナーゼなどが関与
②生体内の還元物質との反応
チオール基をもつ物質などが関与
↓
R-SNO(ニトロソチオール)の形となって
血管内皮細胞から平滑筋細胞に移行
↓
NOを放出して、作用発揮!
と、何が言いたかったかというと、
硝酸薬はそのままでは作用しない!
ということです。
で、この酵素が関与していることが、、
硝酸薬の組織特異性に関係してるんじゃない?
と考えられているようです。
【組織特異性?って】
硝酸薬は、
全身のすべての血管に作用しますが、
静脈に対する作用が明らかに強いことが分かっています。
静脈を拡げることで、
全身の血液を静脈にプールすることが
できるわけです。
プールできると何がいいか?
心臓に戻ってくる血液量が減りますよね。
当然、送り出さないといけない血液量が減れば心臓の負担も減ります。
これを「前負荷の軽減」ともいいます。
すると、心臓の運動量が下がるので、
心臓の運動に必要な栄養と酸素量が減ります。
”狭心症”とは何だったかというと、
心臓の冠血管が狭窄することで、
心臓に十分な酸素を送れないことが原因だったわけです。
つまり、硝酸薬でこの心臓の酸素要求量を
減らす、ということができるわけです。
これに加えて、
多少ですが動脈を広げる効果もあります。
心臓とポンプと考えると、
動脈はポンプに繋がれた「ホース」です。
ホースを太いものに変えれば、
ポンプの圧力を下げても
水を送り出すことができますよね?
血管も同じようにできているのです。
動脈が拡がれば、心臓は少し楽をしても
血液を送り出すことができるようになります。
これを「後負荷の軽減」とも言います。
3つめ!
冠動脈を広げる作用です。
これもそのまま病態につながる効果ですね。
心臓に栄養と酸素を供給している
動脈を冠動脈といいますが、
この血管を拡げてやることで、狭窄部位を緩和と
心臓全体の血流アップができるわけです。
なんと、合理的な薬なんだろう・・・
と思えてきますよね。
(実際は、硝酸薬だけではコントロールできない例を多いのですが。)
では、本題?(笑 に入ります!
・ニトログリセリン
・硝酸イソソルビド
・一硝酸イソソルビド
これらの違いについてです。
その違いは、「代謝の受け方」です。
◆ニトログリセリン
・経口投与は不可
⇒肝臓の初回通過効果でほぼ消失
・それ自体の半減期は5分
・ひとつNO2基がとれた代謝物の半減期は40分
・いずれにしても、舌下で使用するのが基本!
◆硝酸イソソルビド
・別名:二硝酸イソソルビド
・ニトログリセリンよりは半減期が長く、
同量であるならば、ニトログリセリンより効果高い
・ただ肝初回通過効果の影響は強く受けるため、
現状、経口投与では使えない代物。
・半減期は1時間
・2位のNO2基がとれると、一硝酸イソソルビドになり
半減期は2~4時間に延長する
◆一硝酸イソソルビド
腸管からの吸収性もよく、
肝初回通過効果も受けにくい。
⇒バイオアベイラビリティはほぼ100%!
2つのNO2基がついている
硝酸イソソルビドよりも、明らかに優等生!
ゆえに、現在では経口薬では一硝酸イソソルビド
が使われているというわけです!
で、ここで疑問あり。
硝酸イソソルビドいらないんでは?
と感じたわけです。
だっていいところないじゃないですか。
肝臓ですぐに代謝されるし、
結局は一硝酸イソソルビドに変わって
しまうんだし・・・
全部、経皮吸収剤も
一硝酸イソソルビドに変えてしまえばいいんじゃ・・・
って、思いながら
構造をみていた、そのとき!!
なるほど!
一硝酸イソソルビドには-OH基がある。
水溶性上がっているではないか!
そうすると、
経皮吸収剤にはしづらいのかも・・・
だから、硝酸イソソルビドも使われているのか!?
まさに隠れたプロドラッグ的な
位置づけとも考えられるかもな、
と勝手にひらめいていました(笑
ま、本当かどうかは分からないので、
勝手な妄想かもということで
ここまでにしたいと思います!
P.S.
ニコランジルは、上記の硝酸薬
と同様にNO供与体として働くに加え、
ATP依存性Kチャネルの開放する作用もある
ということで、ちょっと別枠にしておきます。